退職させてくれないブラック保育園を費用「0円」で辞めた話

0円で退職

退職希望を出したのに保育園が受け入れてくれない。
こんな違法な保育園の話をよく聞きます。
退職を認めない保育園は違法だと分かっている確信犯か、本当に法律を知らない無知のどちらかです。私が働いていたブラック保育園は確信犯の経営者と無知な園長のダブルでした。

辞めたいのに辞めさせて貰えない、そんなあなたに私が費用をかけずに辞めた方法を紹介します。

弁護士を利用して0円だったワケ

私が弁護士費用0円で退職できたワケは、園長に「弁護士から連絡がいくのでよろしくお願いします。」と言ったからです。
この時点で弁護士事務所へは無料メール相談をしただけで正式に依頼をする前でした

そもそも労働者には法的に退職の自由が認められています。

辞めたい人を辞めさせないということ自体、日本の法律では許されません。

しかし私の場合は退職願いを提出しても認められることはなく、逆に損害賠償金を請求すると脅されていました。

弁護士に正式依頼をする前に退職が決定

そのとき私は却下された退職希望について、もう一度お願いをしていました。しかし、当然ながら受け入れてもらえません。そこで「この後は弁護士の方とお話してください。」と伝えて帰りました。

この時点ではまだ弁護士に正式な依頼はしていません。弁護士の名前を出したことでどんな反応があるのかを見てから決めようと思っていたからです。正式に弁護士に依頼をすると手付金が10万円かかるし、もし本当に損害賠償金を請求されたら依頼内容が少し変わってくる可能性がありました。

(このとき、弁護士事務所による退職代行サービスが5万円前後で受けられるなんて知りませんでした。)

次の出勤日、園長は「もう来なくていいです。このまま帰ってください。」と。

私はその日の勤務を最後に無事退職しました。

正式に弁護士に依頼する前(手付金の10万円を払う前)に退職が成功したわけです。

保育園の長は法律に詳しくない

保育園の園長など上に立つ人の中には、法律に疎い無知な人が結構います。有給の扱い、残業、労働時間の管理をみても一目瞭然です。私が勤めていた保育園の園長は「就業規則」を「労働基準局が認めた正当なルール」だから法律より優先するとはっきり口に出していました。

もちろん間違いです。

そこまで知識が豊富ではなくても自分より下の職員相手なら権力でやり込められると思っているようでした。でも法律の専門家が相手では太刀打ちできない。これくらいは理解していたでしょう。

裁判を起こしたところで勝ち目がないうえに費用と時間がかかってしまいます。

それはさすがに避けたいでしょうね。

パワハラ気質の人は権威のある人に弱い

退職を認めない保育園の偉い人たちはほとんどパワハラ体質です。園長や代表取締役などの権威をかざして職員を押さえつけています。こういう人は逆に強い人、力のある人には人一倍弱いものです。

ですから自治体の保育課、労働基準監督署、弁護士などから連絡が入るとビビってしまいます。

保育士など職員と話をしている間は「会社のルール」や「独自の常識」をかざして威張っていますが、法律に詳しい専門家とは絶対に話をしたくないのです。

保育園は違法性を自覚している 

今回のブラック保育園の園長は無知でしたが、代表取締役(園長の母)は法的に退職を認めないことも、退職によって損害賠償金を請求することも違法だと分かっていたようです。

就業規則を都合よく解釈して職員をコントロールする。そして「法律に詳しい保育士はいない」「脅せば逆らえない」となめてかかっていたんですね。

私から弁護士の話が出たことを娘である園長から聞いて、代表の母親が私を即日で辞めさせることに決めたのです。

入社して最初に同僚から「この保育園は病むか法的手段でしか退職できない」「円満退職はない」と聞かされていましたが、この話、本当だったんですね。

負ける裁判をするくらいなら退職させる

保育士不足の世の中で、一人の保育士に辞められるのは保育園にとってもちろん痛手です。でも法律で退職の自由が保障されている日本で、退職を阻止するための裁判を起こしても勝ち目はありません。

保育士の退職を阻止するために裁判を起こしたら、費用、時間、労力がかかり、それでも勝ち目はなく、残っている保育士たちからの信頼も失う。損害賠償請求を起こしても損害を立証することはほぼ不可能。

そんな負け戦をするだけの時間とお金と労力のある保育園があるでしょうか?
そんな資金があるなら次の保育士採用に回したほうが早いですよね。転職活動をしている保育士もいっぱいいますから。

負け裁判に挑む保育園は、無知で愚かです。

こんなブラック保育園でした

ここで私のいたブラック保育園について簡単に紹介します。

  • 20代後半の園長
  • 小規模園
  • 園長の母親が代表取締役
  • 姉妹園が2園

入社してすぐ職員から聞いた、この保育園の評判は

  • 北朝鮮みたいな保育園
  • 私たちは奴隷
  • 病むか法的な手段でしか辞められない
  • 娘園長を守るのが私たちの一番の仕事
  • 娘園長はいつか誰かに刺されるだろう

最初は「まさか」と思いましたが、現実はその通りでした。

入社前には全然わからず…。悔しい限りです。

退職に関する非情なルール

就業規則には退職について次のようなルールが載っていました。

  1. 「退職希望の150日以上前に申し出なければならない」
  2. 「会社が承認しなければ退職できない」
  3. 「退職して3年間は同一市区町村、隣接する市区町村で同業他社に就職できない」

労働基準監督署の話では、1,2は完全に無効と言われました。

3、の競業避止義務についてはその人の保育園でのポジションにもよるそうですが、一般的に保育士がこの競業避止義務違反に当たるとは考えられないとのことでした。

もともと、競合他社に転職することで会社の機密事項や顧客の流出を防ぐルールです。保育園で働く一保育士にこれが当てはまるとは思えないですよね。

市区町村の保育運営に該当する窓口でも、ほかの保育園に転職したことで違約金を請求するなんて保育園はこれまで聞いたことがない。みんな退職直後でも他園に転職しているし、「自治体でも斡旋しています」と驚いていました。

これまで退職希望を出した人は退職日までの150日間、園長による凄惨なイジメにあっていたそうで、みんな怖くて言い出せない状況にありました。

シフトに穴をあけたら損害賠償請求

 この保育園ではどんな理由でもシフトに穴をあけたら損害賠償金を請求するといわれました。コロナなどの感染症で医師から出社停止の指示があった時以外、たとえ高熱が出たとしても許されないと。
まさか、何かの間違いでは?と思い何度も聞きましたが訂正はなし。過去に損害賠償金を給与天引きされたことがあるという職員がいて愕然としました。

損害賠償請求を避けたいなら代役を立てろとのことでしたが、そもそも代わりなんていない。ぎりぎりでやっていますから。

頻繁に始末書を書かせる

始末書が3枚あればクビにできるというルールがあり、実際それで解雇になった人がいました。ただその始末書も「ヒヤリハット」レベルの内容ばかりで、未遂の事案でも書かされているのでどんどん枚数がたまっていきました。気に入らなくなればいつでも解雇できるぞという脅しのひとつです。

私の退職後、さすがに監査で引っかかってこの習慣は消えていったそうです。

不適切保育に保護者への嫌がらせなど

こんな保育園ですから、園長のマネジメントはめちゃくちゃなものでした。

  • 園長は暇になると保育室へやってきて子どもをからかって泣かせて楽しむ
  • 嫌いな職員にレポートを書かせてみんなで批評する
  • 園長の指示でしたことに対して苦情が入ると、ほかの職員の名前を上げて責任転嫁する
  • 嫌いな保護者が依頼した書類をわざと遅らせて発行する
  • 園長がやんちゃな子どもを暗い部屋に閉じ込め、脅しをかけておとなしくさせる
  • 「映え」にこだわり制作や絵が苦手な保育士をことあるごとにつるし上げ攻撃する

などなど、思い出すだけでちょっと気分が悪くなります。

事務員や調理員として初めて保育園で働く職員は、「保育園ってどこもこんな感じなんですか?」とびっくりしていました。

経営上も問題アリですが、保育に携わる人として、というより人として問題の多い園長でした。

退職するために私がしたこと

保育園から退職希望の承認が得られなかったと言われて、私は各種の専門分野へ法的なこと、業界の常識について調べることにしました。

その時に私がしたことは次の3つです。

  • 労働基準監督署の無料相談
  • 労働関係につよい弁護士事務所へ無料メール相談
  • 市区町村の保育運営関連の窓口への確認

労働基準監督署の無料相談を利用した

労働基準監督署では労働に関する法律についてアドバイスしてくれる無料電話相談窓口があります。私はその相談窓口で3回相談に乗っていただきました。

その時頂いたアドバイスは

  • 退職の意思を伝えてから1か月以上たっているのでいつでも辞めていい
  • 退職可能な時期が来たら出社しなければいい
  • 損害賠償金を給与から天引きされたら「給与未払い」で訴えられる
  • 競業避止義務違反で違約金の請求がきても無視していい

退職に関しては、14日前に意思表示していたら辞められると教えていただきました。

※ ただし退職してからの業務への影響を考えたら、常識的には1か月程度の余裕を見て退職するのが妥当とのことでした。

弁護士事務所の無料メール相談を利用した

次に自宅から通える範囲にある労働問題につよい弁護士事務所へメール相談をしました。
(当時の私は「退職代行サービス」を知りませんでした)

弁護士事務所への無料相談メールに対していただいた返信メールは以下の通りです。(私は有期雇用のパートタイマーでした)

弁護士からの返信メール(一部)

会社との労働契約は、有期労働契約(期間の定めのある労働契約)であると考えます。この場合、労働者は「やむを得ない事由」がある場合には、直ちに退職することができます。今回は「感染症以外の病気による欠勤が許されない。」、「欠勤した場合した場合には、代理を立て、その賃金を支払うか、損害金を支払う。」という状況があり、これは退職せざるを得ない「やむを得ない事由」に当たると考えられます。

また、損害金、違約金については、就職をする際に何か合意をしておりますでしょうか?
損害金、違約金について、金額を定めた合意が、そもそも存在しないのであれば、会社はのる子様が退職したことによって、「損害」が発生し、その損害を立証できない限り、損害金を請求することはできません。この点、有期の労働者が退職したことによって、会社に損害が発生することはそもそも考えにくいと思います。

病気になっても休むことが許されないような職場で、働くことは無理です。退職をして、会社から損害金の請求等があったら、受けて立つという考え方でよいと思います。

ようするに

  • やむを得ない事由がある場合は直ちに退職できる
  • 今回の理由は「やむを得ない事由」にあたる
  • 損害金、違約金について就職の際に「金額を定めた合意」はしていない
  • 退職したことによって会社が「損害が発生したことを立証」できなければ損害賠償請求できない
  • 有期の労働者が退職したことで会社に損害が発生することはそもそも考えにくい

ということです。

そして私の場合、弁護士に依頼するとしたら弁護士費用として手付金10万円を支払っても退職できるだけで、とくに未払い給与などの金銭を取り戻す事案がないことから、裁判に持ち込むメリットが少ない、というよりこのまま辞めてしまえるとのことでした。

最初に提出した退職願いを拒否されているので、新たに退職願いを作成しコピーを取って内容証明付き郵便で本部へ送ることで、退職日が来たら出勤しなくてよいということです。

さらに、そのことでの支払われるべき給与から損害賠償金等と称して天引きされたら、「給与未払い」として取り返すことができるといわれました。 

自治体の保育運営窓口に確認した

法的に問題がないことを確認しても、私の中で釈然としないものがありました。

保育園で働くようになってから、一般企業では当然と思われていた法律が機能していない保育園が多いということです。

保育園独自の何か暗黙のルールが横行しているのかもしれない。これが保育業界の当たり前なのかもしれないと。

そこで、管轄の自治体にある保育運営に携わる窓口へ次のことを確認しました。
私が住んでいるこの自治体では、保育園間の転職が競業避止義務の対象になるのかということを。

回答は「No」でした。

自治体には「保育所・保育士支援センター」が設置されていて、保育士の再就職や転職のための支援が活発に行われていました。
自治体の窓口の人は「保育園を退職したら3年間はほかの保育園では就職できないなんて、今まで聞いたことがない。そんなことを言う保育園があるのか?」と驚いていました。

裁判になる可能性を覚悟した

結局、裁判を起こしてまで一職員を法律に反して退職させないというメリットは無いんですね。勝ち目がないですから。

ただし、状況や保育園によっては法律どおりにいかないこともあると思います。「私は退職できる、裁判になることはない」と頭では分かっていても万が一のことは考えました。

保育園の園長や会社が悪徳すぎて、退職を認めるどころか本当に損害賠償請求をされる可能性もあるのではないか。

これは本当に相手次第。
まともな保育園ならいざしらず、まともじゃない保育園だったので最悪は裁判に発展することを覚悟していました。

退職した後に残ったもの

はれて退職することができた私に残ったこと。

それは次の2つでした。

  1. 必要書類を送らない嫌がらせ
  2. トラウマ

退職に必要な書類を送らない嫌がらせ

これはタチの悪い保育園を退職した時によくあることです。

退職後2週間以内に手続きが必要なものは、国民年金と国民健康保険の切り替えです。健康保険の任意継続をするなら20日以内の手続きが必要です。しかし手続きに必要な書類は1か月以上後になって届きました。
今までにも意地悪で書類を遅らせるなんて頻繁にやっていた保育園ですから、私は書類がもらえなかった時に取るべき対応をあらかじめ準備していました。おかげで慌てず手続きを進めることができました。

自分取得できる退職日が確認できる必要書類(例)

  • 「健康保険被保険者資格喪失証明書」……近くの年金事務所で取得可能
  • 「雇用保険被保険者資格喪失確認通知書」……近くのハローワークで取得可能※

どちらも退職日を確認することが出来る公的な書類です。
申請には退職した保育園の正式名称所在地電話番号が必要なので忘れずにメモをしていきましょう。
※ ハローワークは申請書類の発行をしている事務所が限られているので、手続きの出来る場所を事前に確認してください。

参考はこちら>>
保育園を退職したら「健康保険」と「年金」の切り替え手続きを忘れずに!フローチャートで確認

面白いところでは、必要書類をわざと「切手を貼らず」「送り主の住所や名前を書かず」にポストに投函して、郵便料金を受け取り手に払わせるという幼稚な手を使う保育園もありました。(今働いている保育園です)。

辞めていった保育士に対してつまらない嫌がらせをする保育園は結構多いのかもしれません。

トラウマ

それは意外にも「トラウマ」でした。

法人と雇用契約を結ぶことがこんなに危険なことなのかと思うと、その後どんな企業とも長期で雇用契約を結ぶのが怖くなってしまいました。

退職まで結構冷静に対応できていたので、まさか自分がそんなことになるとは思ってもいませんでした。

長期雇用に踏み切れない私は、1か月から3か月程度の期間が決まった短期パートばかりを探していました。これなら退職時期がしっかり保障されていたので安心して働くことができます。
短期で働いたところはどこも優良企業で、当たり前の法律が当たり前に機能していて、仕事も人間関係もとても恵まれていました。

しかし、短期パートを繰り返すのは50歳を過ぎた私にはそのうち難しくなるのではないか?

こんな不安も感じていました。

ブラック保育園を退職してから1年が過ぎた頃、やっと「保育業界にもどってみようか…」という気持ちが芽生えました。
そして現在の遅番延長保育のパート(1年毎の契約)で働き始めました。

今の保育園も決して優良企業ではありません。やはり違法な部分は多くあります。

しかし退職希望に対してはちゃんと受け入れています!

こんな当たり前のことがこんなにありがたいと感じるとは…。

保育園が職員の退職希望を退けるのは違法

日本の法律では、会社が労働者の退職希望を退けてはいけないと決まっています。
辞めさせてくれない保育園というのは、その時点で違法なブラック保育園です。

介護や妊娠、出産など環境の変化でどうしても退職せざるを得ない場合だけでなく、精神的につらい、夜眠れないなど健康を害して働き続けるのが難しいなども正当な理由になります。

今、退職希望を受け入れてもらえず悩んでいるあなたに、労働者には退職する自由があるんだということ、これが法律で認められているんだということを知ってほしいです。

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